NYU Tandon Bridge Programへの出願から合格まで【コンピューターサイエンス修士課程に出願する条件】

NYU Tandon Bridge Programへの出願から合格までの過程を共有いたします。

みなさん、ごきげんよう。Kazuritsarです。

現在記事を執筆している時点では、もうすでに一年近く経ってしまっているのですが、この度、New York Univeristyの教授からコンピューターサイエンスの基礎をオンラインで学ぶことができるNYU Tandon Bridge Programというプログラムに出願し、見事合格できたので、どのような書類を準備したかなどを含めてご説明したいと思います。

最新の情報を確認しつつ、記事を書いていますが、ご自身で出願される際にも必ずNew York Universityのサイトを確認してください。(ちなみに、合格して受講開始後1ヶ月以内のキャンセルなら全額返金、また、受講期間の延長などもできたと思います)

NYU Tandon Bridgeを受講した経緯

そもそも、どうしてこのNYU Tandon Bridge Programへ出願したのかという理由から説明します。

私はアメリカのTech企業で働きたいという目標があり、そのためには就労ビザを取得する必要があるのですが、アメリカは如何せん、ビザが世界で一番と言っていいほど厳しい国です。おそらく、合法で働くための一番王道な正規ルートは、アメリカの大学や大学院を卒業した後にOPTで数年働いて、企業にスポンサーとなってもらい、就労ビザに申し込むという流れになるかと思います。

私の場合は、大学の学部時代の専攻がコンピューターサイエンスではなかったため、日々の仕事の中で、コンピューターサイエンスを体系的に学びたいという思いも強くあったため、この大学院留学という選択肢が最適だと考えました。

アメリカには、学部時代にコンピューターサイエンスを専攻していなかった人でも出願自体は許可している学校がかなり多くあります。しかし、その場合でも、ある一定程度の条件が設けられています。それは、「アルゴリズム」、「データ構造」、「オブジェクト指向」の3つの内容を大学の学部と同レベルまで自身で学習した証拠を提示しなさいというものです。大学院によっては「ネットワーク」、「オペレーティングシステム」、「コンピューターアーキテクチャ」、「離散数学」などの条件を課している場合があるので、各大学院の出願条件をよく確認してみてください。

そこで、この条件を満たすために、どうするべきか色々調べていたところ、一番多かったのが、courseraやedXといったMOOCs(Massive Open Online Courses)を利用し、オンラインのコースを受講した後に発行される証明書を大学院に提出するという方法でした。(詳しい詳細は後に知ったのですが、community collegeに在籍して取る方法もあるそうです)

私も当初はこの方法で取り組もうと考えていたのですが、X(旧Twitter)で、New York University Tandon Bridge Programのことをツイートしている方がいらっしゃったので、気になって調べてみたところ、体系的にしっかり学習でき、金額も非常にリーズナブル($1,850)で、全てオンラインで完結し、他の大学院とも提携しているということもあり、明らかにこちらの方が利点が多そうでした。そのため、NYUのプログラムを活用して、アメリカの大学院の出願で必要な前提条件(prerequisite)を満たす方向で大学院受験の準備を進めることにしました。

利用した留学エージェント

まず、声を大にして言いたいのですが、NYU Tandon Bridgeに出願するためだけならば、留学エージェントを利用しなくても問題ないです。しかし、NYU Tandon Bridgeの後に、大学院留学も視野に入れているのであれば、留学エージェントを利用するのも1つの手段として考えても良いかもしれません。

私の場合は、大学院を目指しており、現地の授業や卒業後のことなど、色々お聞きし、戦略を練りたかったため、留学エージェントを利用することを決意しました。

私が利用させていただいたのはPolymathという理系留学専門の留学エージェントです。(Noteでも有益な情報を発信してくださっています)

留学エージェント自体はたくさんありますが、語学学校やMBA向けのものが多く、コンピュータサイエンスに関して詳しい留学エージェントはまったくと言っていいほどありませんでした。そのような状況で、たまたまPolymathを発見し、初回の無料相談をしていただくことになりました。コンサルタントの全員がアメリカ在住であり、コンピュータサイエンスやデータサイエンスといったTech分野に詳しく、そして何より、とても丁寧な対応をしてくださる方々でしたので、サービスを利用させていただくことにしました。

いくつかプランがありましたが、私の場合は、3ヶ月のプランで、オンライン面談、メールやチャットでの質疑応答、出願書類の添削をしていただきました。出願書類の添削だけのプランなどもあったりしますので、ぜひ一度問い合わせて確認してみてください。

1つ1つのアドバイスが非常に的確で、人としても本当に尊敬できるような方々です。

海外就職対策のプランもありますので、大学院入学後にそちらも利用させていただこうかなと考えております。

出願に必要な書類

最新の内容を必ずNYUのページで確認してください。準備するものとしては以下になります。

  • Online Application
  • Resume
  • Statement of Purpose
  • Transcripts

Online Applicationは個人情報や以下で説明する3つの書類を含めた全ての出願書類・手続き全般のことを指しています。つまり、オンライン上での入力フォームのことです。New York Univeristyのシステム上でアカウントを作成し、ログインし、個人情報を入力します。そして、以下の書類全てをPDFでアップロードして「submit」ボタンを押すと出願完了となります。

Resumeはいわゆる履歴書です。職歴がそこまで長くない方(当時の私は5年)はPDF1枚に収めるのが良いそうです。私は下記の構成で記載しました。

  • 簡単な自己紹介文
  • 職歴(会社名、役職、業務内容)
  • 仕事や大学で得たスキル(プログラミング言語等)
  • 学歴(大学名、学位)

余力があれば、LinkedInも作成しておくことをお勧めします。Resumeと全く同じ内容をコピー&ペーストすれば良いだけです(ResumeにLinkedInのリンクを貼っておきました)。

Statement of Purposeはいわゆる志望理由です。エッセイと呼んでいる方もいるかと思います。NYU Tandon Bridge programをなぜ受講したいかの理由を500字以内の英文で記述する必要があります。

大学院の出願でもこのStatement of Purposeを作成する必要があったため、NYU Tandon Bridgeと大学院のどちらにおいても併用できる文章にすることにしました。最初は文字数は意識せずに長めの文章を作成しました(だいたい700~800字くらい)。その後、NYU Tandon Bridge用に500文字に収めて内容も少し修正しました。

書くべき内容としては、大学での学業及び仕事での成果や困難などのエピソードを交えて、大学時代から現在までの経歴を説明します。エピソードは、「どのようなことが生じ」、「どのように考えて」、「どのように行動・対処したのか」を可能であれば、数値を用いて明確にすることが重要です。私はWebの開発を普段しており、プログラムに関連する内容の方が好ましいため、仕事でのエピソードを2つ記載しておきました。

そして最後に、NYU Tandon Bridgeをどうして受講したいのか、それがどのように自身の将来につながるのかということを説明します。(字数に余裕がある場合は、NYUにとってあなたを合格させることのメリットは何かということも追記できると良いかと思います)

時系列で一連のストーリーのように分かりやすく記載することを心がけてください。

私がStatement of Purposeを作成する際には、他人(エージェントの方や知り合いの方)が書いたものが色々と参考になりました。当時の私と同じ境遇の人に役立ててもらいたく、あまり乗り気ではないのですが、NYU Tandon Bridgeで合格を勝ち取ったStatement of Purposeをどうしても参考にしたいという方のために、私のものを公開したいと思います。

しかし、誰にでも見れるようにするのは流石に恥ずかしいので有料という形で、どうしても困っている一部の人向けにしておきます。お勧めはしませんが、興味があれば、下記のNoteのリンクから購入してください。あくまで、参考程度にどどめておき、自分で深く考え、自分の言葉で作成してみてください。

Noteへのリンク(NYU Tandon Bridgeで合格を勝ち取ったStatement of Purpose)

Transcriptsは大学時代の成績表のことです。アメリカ以外の大学を卒業している場合は、外部の成績評価機関に英文の成績を郵送して、アメリカの評価基準で成績を再計算・再評価してもらった成績を提出する必要があります。

私は一番有名なWES(World Education Services)という評価機関を使用しました。一連のやり方は別の記事ですでにまとめてありますので、ぜひ参考にしてみてください。

WES(World Education Services)でGPAが上がる!?日本のGPAをアメリカの基準で再計算【低GPAからの海外大学院出願】

2月 23, 2024

以下、Transcriptsに関する詳細の抜粋です。

International Transcripts
Applicants whose transcripts are not from the United States must provide English translated, evaluated transcript/s. We require a course-by-course evaluation showing your GPA on a US 4.0 GPA Scale, showing the name of each course taken and the grade for each class. The evaluation must show you have the equivalent of a 4 year US bachelor’s degree. The evaluation can be done by any evaluation service that provides professional evaluations. Please have your evaluation and/or translation mailed to you and upload it to your NYU Tandon Bridge application. There is no preferred service that can provide this evaluation but the following services would be acceptable for your Bridge application:

Course-by-Course Evaluations can be done by any of the following services:

https://engineering.nyu.edu/academics/programs/nyu-tandon-bridge/how-apply-bridge-program

プログラムに関して

NYU Tandon Bridgeのプログラムは年に数回ほど開催されており、私が受講したのは、2023年のSummer Termで、17週と24週の2通りあり、24週を選択しました。私の時は担当教授は2人おり、前半と後半で教授が変わりました。現在、この記事を詩筆している時点では21週と28週の2通りに変更になっているようです。NYU Tandon Bridgeのホームページで確認してみてください。

仕事をしながら受講する方は、28週の方にした方が良いと思います。ボリュームが多いのでかなり大変です。

主な項目としては離散数学、C++、データ構造、メモリ、アルゴリズム、Runtime Analysis、オブジェクト指向、オペレーティングシステム、ネットワークとなります。

データ構造、アルゴリズムやオベジェクト志向はすでに独学していましたが、メモリやRuntime Analysisはあまり深く勉強したことがないにも関わらず、実務で役立つ内容だったので(Runtime analysisはコードを比べる際にどちらがより最適かを見極める手法となります)、しっかりと学習できてよかったです。

オペレーティングシステムとネットワークは普段あまり触れず、勉強する機会もないため、受講中に、もっと勉強しないといけないという危機感を感じました。特にこの2つは学習する範囲が広いにも関わらず、かなり授業のスピードが早く、一回あたりに消費する量も多かったです。

各自ですでに習得している知識によって変わってくるかと思いますが、労力を要するという点で言うと、私を含めた多くの受講生は「離散数学」、「オペレーティングシステム」「ネットワーク」の3つで特に苦労していました。私の場合はある程度実務でコーディングをしていたので、C++はあまり苦労していないですが、IT未経験の方は上記に加えて「C++」と「オブジェクト指向」もそれなりに負荷のある項目だと考えてください。

これらの項目を受講する前までにある程度準備をしておくと結構楽になるので、その詳細も次の見出し(「合格後から受講開始までにしたこと」)に記載しておきました。ぜひ確認してください。

基本的に、1週間単位で取り組む必須事項としては下記になります。

  • Zoomでの教授のLive授業が週1回で約2時間(後で録画を見ることもでき、参加は任意)
  • 教材を読む(毎回範囲が指定される)
  • 各単元のVideoの視聴(Udemyのような感じです)
  • 週末に課題を提出

上記に加え、参加は任意ですが、TA(teaching assistant)がZoomで開催するオフィスアワーがほぼ毎日あり、そこで疑問点を質問できます。

私の場合は、平日の夜と土日は基本的にBridgeの勉強に時間を費やしていました。時間管理の上手い方であれば、もっとスムーズにできるのかもしれません。

そして、このプログラムでは計4回の試験があります。試験には選択問題、記述問題、コードの実装などが含まれています。(試験前には過去問を解き、discordのチャット内でみんなで答え合わせをしたりしてました)

NYU Tandon bridgeでは最終的に修了証明書が発行されるのですが、プログラム全体での成績がB+以上だとDistinction(成績優秀)という記載が追加されます。成績の評価方法としては、 4回の試験が9割くらいで、 毎週の課題が1割の比率です。 ですので、試験が全てです。試験のできがよくないと、Distinctionが取れないと思ってください。ちなみに私は無事にDistinctionを取得できました!!

必要な英語力についていうと、教科材を読む時にリーディング力は必要になりますが、DeepLなどを使えば乗り切れなくもないです。 リスニングに関しては、確かに、教授のLiveの授業で理解できなくて困ることが何度もありましたが、録画のビデオ(Zoom)を字幕をonにして後から見返せば理解できました。

スピーキングに関しては、Liveの授業中やTAのオフィスアワーで質問をしたい場合は必要になります。しかし、チャット形式のようなQ&Aのプラットフォームも準備されているため、授業以外の時間にそちらで質問を投稿すれば、TAや他の学生が答えたりしてくれますし、TAや教授に直接メールで聞くこともできます。

受講開始までに準備したこと

私はNYU Tandon Bridge Programの合格通知を受け取った後から受講開始までの間に「離散数学」と「C++」の学習をしていました。

こちらをまず第一優先に進めることをお勧めします。(NYU Tandon Bridgeのカリキュラムの順序としては、「離散数学」、「C++」、「オペレーティングシステム」、「ネットワーク」の順番になっています)

授業が開始してから、確か1ヶ月以内であれば受講を取りやめても全額返金される、また、別の時期に受講をずらせるということも相まって、250人くらいいましたが、100名近くが自ら去って行きました。その理由が「離散数学」です。受講前のオリエンテーションでも、NYUの担当者が「離散数学」のでき具合が決め手になると言っていました。

この離散数学は、日本の高校で数1A、数2B、つまり文系数学の範囲までをある程度勉強できていれば、大抵の日本人であれば問題なく突破できると思います。しかしながら、課題の量があまりに多いため、ついていくのが大変なのもまた事実です。

受講開始前までに下記のUdemyの講座で数学を復習しておきました。全てやる必要はないので、NYUのコーストピックと比較しながら進めてください。(Sets, Logic, Number theory, Proofs, Functions)

Discrete Mathematics

私は新卒で入社した会社の研修でJava、現在の仕事でPythonを毎日使用しているため、コーディングに関してはあまり不安はなかったのですが、C++は一番難しい言語であり、メモリを意識しないといけないということもあり、念の為、C++も下記のUdemyの講座を使用してサクッと学習しておきました。

一週間で身につくC/C++言語

私はここまでしか準備していなかったのですが、時間に余裕のある方は「オペレーティングシステム」と「ネットワーク」の準備をすることもお勧めします。

「オペレーティングシステム」で特にお勧めできるものはないのですが、「ネットワーク」の授業に関しては、University of Massachusetts AmherstのJ.F. Kuroseという日系の教授が執筆した書籍を元に授業が構成されています。この教材用に作成された講義の録画がKurose教授のサイト上から閲覧できます(Youtubeにもあります)ので、時間のある方は前もって見ておくと良いかと思います。

Computer networking

また、GitHub上で過去の講義の資料、使用する教材のPDF、毎週の課題や試験を閲覧・ダウンロードできるので、どのくらいのレベル感か気になる方はぜひ確認してみると良いと思います。(もしくはGoogleで、「Github NYU tandon Bridge」と検索)

GitHub上でNYU Tandon Bridgeを検索

ちなみに、参加している受講生自体は、私のようにコンピューターサイエンスの学位はないが、仕事で普段コーディングをしているという人が多かったです。もちろん、これまでにIT関連の経験が一切ないという人もいましたが、そういう人たちもやはり、受講開始前までにある程度独学で準備をしていました。

再度になりますが、NYU Tandon Bridgeを受ける前にはある程度の予習・準備することをお勧めします!!

まとめ

いかがでしたでしょうか。

記事を書きながら振り返ってみると、NYU Tandon Bridge Programの学習を通じて、知識の向上はもちろんですが、他の受講生やTA(teaching assistant)と交流できたことも楽しかったですし、何より、やり終えた後の達成感がありました。

この記事を見ている方は、おそらくコンピューターサイエンスに興味のある方、もしくは、私と同じようにアメリカやその他の海外の大学院に出願しようとされている方だと思います。

大学院に出願するのであれば、受講することをお勧めしますが、時間の制約が厳しい方にはあまり強くお勧めできませんし、courseraやedXを利用する方が良いのかもしれません。

実際、仕事と両立しながら取り組むのはかなり大変でした。しかし、$1,850という金額で、同じ境遇にあり、同じ志を持った世界中の受講生とともに一流大学の教授陣から授業を受けれるというのは、海外留学の前段階として、アメリカの授業の進め方や雰囲気などを経験できるという点でも、非常に有益だったと思います。

私の経験談がみなさんの留学への一助となれば幸いです。

Kazuritsar
2025年にアメリカの大学院に留学することが決まりました。引き続き頑張ります!!

ABOUTこの記事をかいた人

大学時代にプログラミングに出会い、感動し、現在はIT系の会社で働いています。2017年12月から2019年7月までインドのNoidaで駐在。このブログでは旅行、IT、日々の出来事を発信していきます。